おうちにいて突然雨漏りしだしたら、慌ててしまいますよね。「どうしよう…すぐ修理!業者探してすぐ電話!」と。
でもあせってはいけません。止まない雨はないのです。とりあえずバケツなどで水を受けて、いったん落ち着きましょう。
あせって業者を呼んでもすぐに対処はできません。大体の場合は、雨が止んでから対処です。冷静に判断しないと間違った選択をしてしまいます。
雨漏りの原因はさまざまです。屋根から漏れてくるイメージが強いですが、実は屋根以外の方が多いんです。
どんな原因で雨漏りするのか?補修の費用は?火災保険は使えるのか?瑕疵担保保険って何?順を追って説明していきましょう。
1.台風が原因の雨漏り
台風が原因の雨漏りは、2通り考えられます。一つ目は台風の時だけ雨が漏り、その後の普通の雨では漏らないパターン。もう一つは台風の時も、その後の普通の雨でも漏るパターンです。
一つ目の台風の時だけ雨漏りする原因は、雨と風が強いときに、風圧で雨が壁などを昇る現象が起きるからです。通常水滴は下に落ちていきますが、風が強いと壁や屋根を上に昇っていきます。
そのため、通常では入らない隙間などに雨が入り、部屋内に漏れてくることがあります。
この場合は、危険度はそれほど高くありません。年に1回あるかないかぐらいなので、下地が腐ってしまうなどの心配は少ないです。
ですので、外壁の塗装などの時に合わせて処理をすればよいでしょう。費用的には、塗装工事のついでになりますので、コーキングなどで済むようなことであれば、2万~5万円程度の話で済みます。
二つ目の台風の時もその後の雨でも漏ってしまう場合、屋根の瓦のズレや割れ、もしくは屋根材が飛んでしまっている。または、外壁にモノが当たりヒビなどができていたり、外壁そのものが飛ばされていたり。などの原因が考えられます。
この場合は、すぐに修理が必要です。台風の後は一通り外壁や屋根をチェックしてみたほうがよいでしょう。
費用的には、被害の程度によって全然金額が違います。高所の作業でしたら足場が必要になりますし、材料がなければ応急処置の費用も掛かります。瓦のズレ程度であれば、2万~5万円程度で済むかもしれません。
足場が必要な工事であれば、足場だけでも10万~20万円はかかるでしょう。さらに屋根を全部葺き替えるなんてことになったら100万~300万円とかなりの高額です。
そんなときに役に立つのが火災保険です。加入されている火災保険の種類によっては、台風などの被害の修理に保険が使える場合があります。実際に保険を使う手続きも難しくないので、絶対に使ったほうがお得です。
2.経年劣化が原因の雨漏り
建物も人と同じで年を取ると漏れやすくなります。台風なども来ていないのに、普通の雨で漏るということは、経年劣化によるものだと思ってよいでしょう。
部屋内の天井や壁に雨が染み出てくるということは、かなりの重症です。早急にメンテナンスが必要です。
経年劣化が原因である場合、現状雨が入っている部分だけでなく、全体的に劣化が進んでいる場合がほとんどですので、全体的なメンテナンスを考えたほうがよいでしょう。
せっかく直しても、また違う場所から雨漏りしてしまったら、費用も手間も余計にかかってしまいます。
経年劣化が原因でおこる雨漏りは以下の通りです。
1.屋根の谷樋の腐食
屋根の谷になっている部分には、金属の板が入っており、その部分を谷樋と呼びます。昔は銅板が多く使われていましたが、腐食することがあるため、今はステンレス板が多いです。
谷樋は雨が集まる部分で、しかも雨のしずくが落ちるヵ所がほぼ一緒です。その部分に小さな穴が開き、雨が入るようになってしまいます。概ね、築30年以上の建物が多いです。
補修方法はいろいろありますが、ここでは2パターン紹介します。
一つ目は、穴が開いている部分のコーキング処理、及び鋼板を貼り付ける方法。費用的には2万~5万円程度。これで雨漏りは止まりますが、数年で再発する恐れがあります。
二つ目は、谷樋を新しいステンレス板に入れ替える、又は上から被せて入れる方法。費用的には、10万~20万円程度です。ここまでやれば、30年ぐらいは心配ないでしょう。
2.屋根の棟部分の漆喰の劣化
屋根の漆喰は、20年前後で表面がボロボロになり雨がしみこむようになります。古い土葺き瓦屋根のお宅ですと、瓦の下の防水の役割をするルーフィングの性能がよくなかったり、杉皮で施工されていたりしますので、建物の中に雨が漏ってきます。
そのまま放置していると、屋根の下地が腐り、大規模な修繕が必要になってしまいます。
漆喰の詰め替えだけで済むようであれば、15万~30万円程度。屋根下地まで腐っていて、下地の交換などをしなければならない場合、50万~100万程度、それ以上になる場合もあります。
漆喰の寿命は20年前後ですので、外壁塗装など足場を設置した時に一緒にメンテナンスしたほうがよいでしょう。
3.屋根材自体の劣化
屋根の材質が瓦の場合、寿命は50年~80年といわれております。瓦自体の劣化で雨が漏ることは少ないでしょう。漏れるとすれば、割れたりズレたりしている場合と、上記のような谷樋の劣化や漆喰の劣化が原因でしょう。
屋根材がスレートやカラーベストの場合、30年以上メンテナンスをしていなければ劣化が進み、雨がしみこむようになります。
そうなってしまった場合は手遅れです。屋根を葺き替えるか、上から新しい屋根材を被せるしかありません。費用的にも100万~250万円程度かかります。
そうなる前に、10年程度で塗装が必要です。塗装することで雨がしみこむのを防げます。しかし、塗装の時にカラーベストが重なっている部分をふさいでしまうと、これもまた雨漏りの原因になってしまいます。
適切な方法でのメンテナンスが必要です。
屋根材が金属、瓦棒やトタン、折版の場合、経年劣化で錆がでて腐食が進むと穴が開き雨が入ります。やはり30年前後が寿命でしょう。
また、板金は釘で打ち付けますので、年月が経つと釘が浮いてきます。その結果、板金部分が浮いて隙間から雨が入ることもあります。
瓦屋根やカラーベストなどの屋根でも、壁との取り合い部分や棟の部分などに板金が使われているため、同じようなことが起こります。
金属の屋根も10年程度で塗装したほうがよいでしょう。その時に釘の浮きなどもチェックすると安心です。
4.屋根のパラペット部分の劣化
屋根のパラペット部分は、割と雨漏りの原因になりやすいです。板金で被せてあるパターンはよく漏ります。ジョイント部分のコーキングが切れればそこから入ります。
特に古い建物は、板金の下の処理が甘いため、台風など風が強いときも隙間から入ることが多いです。最近の建物は防水シートを貼ったり、捨てで一枚板金を貼ってから、仕上げの板金を貼るなどしているため簡単には雨漏りしません。
コーキング処理で一時的に雨漏りを止めることはできますが、またすぐに漏れ出す可能性があるためお勧めできません。
一度めくって、下地の部分からやり直す方が長持ちしますし安心です。
費用的には、30万~60万円程度ではないでしょうか。当然、足場が必要な場合もありますし、メーター数によって金額は異なります。
こちらも、外壁のメンテナンスと合わせて工事したほうがお得です。
5.ベランダ笠木の劣化
先ほどのパラペット部分と同様、ベランダの笠木や手すり部分からの雨漏りもよくあります。
特に築30年前後又はそれ以上前の建物は雨仕舞が悪いです。そのため、コーキングが劣化して切れたり、手すりの付け根の部分に隙間ができたりすると、そこから内部に雨が入っていきます。
コーキング処理で一時的に雨漏りを止めることはできますが、またすぐに漏れ出す可能性があるためお勧めできません。
一度笠木や手すりを外し、防水紙や板金処理をしてから復旧したほうが確実で、長持ちしますし安心です。
費用的には、15万~30万円ぐらいです。しかし、長年雨が入り続けていると手すりの壁部分も下地が腐っていることが多いです。そこも修繕となるともう少し費用は掛かります。
6.外壁のコーキングの劣化
外壁がサイディングやALCパネルの場合、ジョイント部分や窓廻りにコーキングが打ってあります。コーキングは、劣化が進むと固くなり縮んだり切れたりします。そうなるとその部分から雨が入ることがあります。
余談ですが、室内から見たとき、サッシと窓枠の隙間から雨漏りする場合があります。サッシ自体の雨漏りか、あるいはサッシ廻りのコーキングが原因かと思いがちです。
ところが、サッシ自体が雨漏りすることはほぼありません。極稀にありますが…。大抵、その窓より上の方の外壁のコーキングが切れていたり、壁と軒の取合部分がよくなかったりという場合が多いです。
外から雨が入っている部分と、室内に出てくる部分は必ずしも近い所ではありません。壁の内部の下地や屋根の梁などを伝わって、全く別の所に出てきます。だから、原因を探るのは難しいです。
話を戻します。コーキングが切れている所を補修すれば、雨漏りはおさまります。しかし、そこだけが劣化しているということは考えにくいので、全体的なメンテナンスを考えたほうがよいでしょう。
コーキングの部分補修であれば、1万~3万円程度。建物すべてのコーキングの打ち直しをしようとすると、40万~80万円ぐらいはすると思います。
7.外壁材自体の劣化
外壁材も様々な種類がありますが、メンテナンスフリーの外壁材は存在しません。寿命の違いはありますが、必ず劣化はしていきます。
金属系の外壁はさびて穴が開くことがあります。サイディングやALCパネル、モルタル塗りはひび割れが生じたり、塗装の塗膜が悪くなれば雨が浸透するようになります。杉板も反りや割れ、腐りなどがおこります。タイル仕上げも何十年もたてば、目地部分がボロボロと取れたり、タイル自体が割れることもあります。
外壁自体の劣化で雨が漏るのは、末期です。なぜそこまでほっといたのか?ここまでくると補修では済まないので、貼り替えになるでしょう。下手すると外壁下地や躯体にまで影響が出ているかもしれません。
費用は、貼り替えだけで済めば、150万~250万円程度。下地や躯体まで直すことになれば、300万円を越えてしまうこともあるでしょう。
長く住み続けたいのであれば、雨漏りしていなくても定期的にメンテナンスすることが大切です。
8.ベランダなどの防水の劣化
ベランダや屋上の床部分の防水の劣化も雨漏れの原因の一つです。防水は種類によって多少違いますが、概ね10年程度でメンテナンスが必要です。
シート防水はシート自体が浮いてきて、ドレン(排水口)廻りや壁際に隙間ができたり、継ぎ目が剥がれたりして雨が入ります。ウレタン塗膜防水は塗膜の膨れや破断が起きる可能性があります。FRP防水は伸縮性が低いため、躯体の動きによって割れる可能性があります。
いずれも、普段ちょっと気に掛けて見ていれば、何らかの兆候がみえます。年数的な部分も含めてメンテナンスを考えていれば、雨漏りをする前に予防できます。
費用は、防水の状態によって異なりますが、表面のトップコートのみ塗るだけで済めば、5万~10万円程度。やりかえが必要であれば、20万円~40万円程度だと思います。
3.施工不良による雨漏り
施工不良による雨漏りもたまにあります。手抜きによるものもありますが、施工業者が無知でやり方を間違える場合も多々あります。
まずは、そんな災難から、住宅を購入した人を守る制度のご紹介です。
住宅瑕疵担保責任保険というものが存在しています。瑕疵とはざっくりいうと欠陥のことです。
「新築住宅を提供する事業者は、構造耐力上主要な部分(屋根、柱、壁、床、土台、基礎など)と雨水の侵入を防止する部分(外壁、屋根、防水など)の瑕疵(欠陥)について、10年間瑕疵担保責任を負う。」というものです。
新築してから10年以内の欠陥による雨漏りであれば、保険が適用されます。
最近の新築は、よほど変な業者に頼まなければ、10年未満で雨が漏ることはないと思いますが、保険があると安心ですよね。
施工不良でありうる雨漏りは次の通りです。
1.既存部と増築部の取り合い部分
おそらく、この原因も結構多いのではないでしょうか。既存の建物に継ぎ足して新しい建物をくっつける場合、その取り合い部分の雨仕舞がしっかりできていないと雨が漏ります。
コーキングだけで無理やりおさめていたり。水切りが入って無かったりなど。予算もあるのでしょうが、確実な対策がされていないことがあります。
雨漏りしないようにしっかり直す場合、外壁などを一部めくり、水切りなどをいれますので、20万~40万円程度はかかると思います。
2.各種取り合い部分の雨仕舞
2階の外壁と1階の屋根の取り合い。軒天と外壁の取り合い。ベランダと外壁の取り合い。ベランダ防水と外壁の取り合い。サッシと外壁の取り合い。この辺の取り合いの部分のおさめ方を間違えると雨が入ります。
こちらも、外壁などを一部めくり、水切りなどを入れなおしますので、20万~40万円程度はかかると思います。
3.ルーフィングや防水紙の施工ミス
これを間違えるのはなかなか考えられませんが…。屋根のルーフィングや壁の防水紙は、下から上に重ねて貼っていく。それぞれの材料で決まった重ね代があるのでそれに合わせて施工する。
難しくはないですが、間違えれば大変なことです。どちらも、雨の侵入を防ぐ大事な役割を果たすものなので。
これこそ、瑕疵担保責任がありますので無料で直していただけるでしょう。
4.まとめ
雨漏りの原因は様々で、その原因の特定も簡単ではありません。しかし古い建物であれば、その当時のやり方が悪い場合、例えばベランダの笠木のおさめ方など、ある程度予測はできます。
そして、劣化によるものであれば、10年~15年のサイクルでメンテナンスをしていれば、まず雨漏りすることはないでしょう。
部分的に雨漏りの原因ヵ所だけを、直したい人もいるかもしれませんが、劣化が原因であれば、他の部分も劣化している可能性が高いため、ちょこちょこと直すよりも結果的には安く抑えられ、お値打ちになると思います。
保障や保険なども一度確認してみてはどうでしょう。もしかしたら、費用負担を軽減できるかもしれません。
雨は憂鬱かもしれませんが、止まない雨はないのです。
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