リフォーム・リノベーションの仕事をしてますと、他の業者が既にリフォームを完了して、数年たっている物件を、さらにリフォームするという事も。
そのときは、他社がどんな工事をしているか気になるものです。時としてそれは、とんでもない光景を目の当たりにする瞬間だったりするわけで…。
何でこんな事しちゃうんだろうなぁって事は、小さい事も含めれば山のようにあります。
完全に詐欺のような悪徳リフォームもあれば、おそらくリフォームした業者が無知であったがために起こってしまったものもあります。
私が見てきた、そんな事例を紹介します。今後の参考にして頂ければ幸いです。
事件簿File.1 通し柱切断事件
ーー窓から差し込む光がとてもまぶしかった。しかし、なぜだかわからないが、わたしはどこか切なさのようなものもも感じていた…
これは、私がまだ耐震診断員として働いているころの話だ。
その日もいつもと変りなく、とある住宅の調査に訪れていた。今回は、木造住宅の2階建てだ。立派な造りである。相当お金をかけて建てられたのだという事がすぐにわかる。
中に入るとまだ新しいキッチンが…。
「昨年リフォームしたんですよ」
優しい口調で話しかけられる。奥様だ。とても穏やかで優しそうだ。
私は、いつも通り調査を始めた。まずは建築確認の図面をお借りした。建物の基本情報を知るためである。続いて、その図面と現状の間取りに違いがないか確認していった。
昔の建物は、建てている最中に間取りを変更することが多々あった。「何のための設計図だ」と思うかもしれないが、割と普通のことである。
案の定、図面と違う所が多数あった。昨年のリフォームで変わったところも多いようだ。
ーーと、大きな違和感が…。建築確認の図面と壁や建具などが違うのは、ある。しかし、しかし通し柱が無くなっているというのはあり得ない。
ここで捕捉だが、通し柱とは、2階建て以上の木造建築物で、土台から軒まで通した1本の柱のこと。つまり、1階と2階をつないで、建物を一体化させるものでとても重要な柱である。
あるはずの通し柱が…窓になっている⁉まさか…何かの間違いだ。そうあってほしい。
近くの天井に点検口があった。電気工事などを後からでもできるように設けることがある。はやる気持ちを抑えながら、天井裏をライトで照らす。あっちが例の窓の方だ。
ーー居た。あの太さは間違いなく通し柱だ。見事に切られている…。何てことを…。悲しみと怒りと…何とも言えない感情が湧き出てきた。
「どうでした?」
調査を終えると奥様がお茶を出してくれた。
「立派な造りですね。年数的に耐震性は少し足りてないと思います。」私は言えなかった。凄惨すぎる事実を伝えて、この優しい奥様につらい思いをさせてはいけない。
窓辺のフローリングに反射する光が私を強く照らしていた。
この事件は、建築を少しでもかじっていれば、どれほど残忍な犯行であるか一目瞭然であります。少しでも構造のことを知っていれば、こんなことはしません。
百歩譲って切ったとしても、補強ぐらいはしておいてほしかった。やり方はいくらでもあったはず。残念過ぎる事件でした。
事件簿File.2 小屋裏・床下大量金物事件
これもまた私が若かりし頃、耐震診断員をしていた頃の話である。
市町村の無料耐震診断が始まり、多くの建物を調査する機会があった。延べ200件程度は調査した記憶がある。
これだけ多くの家を調査していくと色々な事件に遭遇する。
小屋裏で謎の生物の屍を見つけた話は、また次の機会にしよう。
今回の話は、そんなに良くある話ではないが、5件程度確認された事件である。
先に述べたが、この診断は無料であるため、「耐震補強をした」という人からも調査を依頼されることもある。
私が調査に伺った家もまた耐震補強をしたという話だ。
「どれどれ。どんな補強がしてあるのかな」小屋裏の調査を開始する。
ーーと、「これはっ⁉」衝撃の光景だった。
ゾウが踏んでも壊れなさそうな金物。いかにも強そうだ…。それが、すべての接合部(木材と木材のつなぎ目)に付いている。床下にも同じようなものが。 ※柱には付いていない
これは強そうだ。説得力がある。見ただけで伝わってくる…これは騙されたな。
ご主人の話では、「これだけやれば安心だ」と言われたらしい。
金額を聞いてさらに驚いた…100万ぐらいだそうだ。「そんな金があるなら私に下さい」と思わず言いそうになったが、ギリギリのところで踏みとどまった。
こんな悲しい光景は二度と見たくない…。そんな私の願いも虚しく、その後何件か似たような光景を見ることになる。
その中でも最も切ない事件現場だったのは、屋根裏の点検口付近のみ、つまり覗いて見えるところにだけ、金物が付いているという現場。まさに詐欺中の詐欺である…。
このような手口は、主に訪問販売が多い。特にお年寄りが被害にあいやすい。情報弱者だ。
少しでも建物の知識、あるいはこういう詐欺があるという事を知っていれば防げただろう。
ここで建築知識の紹介をしよう。
今回付けられていた金物は、建設省告示による接合部の仕様に当てはまらない物である。また、Zマークなどの認定を受けたものでもない。
そもそも、母屋と小屋束の接合部は、“カスガイ”という金物で事足りるのだ。ネットで調べてもらえればわかると思うが、ちょっとした金物である。
それを見た目が強そうな金具を付けて、すごい効果がありそうに見せているのである。肝心な柱の部分には何も金物は付いていない。恐らく、目立たないし面倒くさいからだろう。
本当にとんでもない業者がいたもんだ。気を付けなければならない。
あとがき
いかがでしたでしょうか?プロデューサーHの事件簿。
「そんなに面白くない」 …でしょうねぇ~。でも負けない!
こうした事態を回避するには、多少の勉強も必要でしょう。参考にしてみてください。
まだまだ、ファイルはたくさんありますんで、また次回。こうご期待?
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