「リフォーム」は、私の記憶が確かならば、2000年代に流行りだしたイメージがあります。一方「リノベーション」は、ごく最近、2010年代の後半頃に出てきた言葉であるというのが私の認識です。どちらも住まいに手を入れて、使いやすく、きれいにするという部分は変わりません。
では、「何が違うの?」という疑問が出てくると思います。そんな疑問をお持ちの方に、知っておくと役に立つ知識を提供いたします。
リフォームとリノベーションの違い
ズバリ言いますと、「リフォーム」と「リノベーション」に明確な線引きはありません。冒頭でも述べたとおり、「リノベーション」という言葉は、ごく最近多く使われるようになりました。では、それより前、例えば2000年代に「リノベーション」という工事は存在しなっかたのか?答えは「✖」です。どういうことか。
私の話で恐縮ですが、私は2000年代からリフォームの会社で働いておりました。その頃の建築業界は、「新築」か「リフォーム」か?どっちがお得?…というような構図でした。当然、「リノベーション」という言葉は全く聞いたことがありませんでした。
しかし、今になって考えてみれば、いわゆる「リノベーション」という内容の工事はしていたと思います。その当時は、「大規模リフォーム」や「スケルトンリフォーム」などと表現されていました。ですので、私のように前々からリフォーム業界にいた人間からすれば、「リフォーム」も「リノベーション」も同じという感覚の人が多いかと思います。
これは私の個人的な見解になりますが、新しいモノ好きな国民性がありますので、「リノベーション」という新しい言葉、しかも横文字でおしゃれなワードを使うことで、新たな流行を作ってやろうと誰かが仕掛けたのではないか、と。2020年現在、「リフォーム」はテレビ番組でタレントがやってみせたり、家電量販店やホームセンターなど建築とはあまり関係のない業界も参入したりしています。「リフォーム」のイメージは、「誰でもできる」「簡単で安くできる」という、前向きにとらえると身近なモノに、後ろ向きにとらえると価値が低下した、というように感じます。そのため建築業界では、「リノベーション」という新しいワードを使い、差別化を図り、新しい価値を見出そうとしているのだと思います。
話を戻します。「リフォーム」「リノベーション」に明確な線引きはありませんが、一般的には次のような分け方が多いと思います。
「リフォーム」とは、比較的軽微な修繕工事。例えば、壁紙の貼り替え・水回りの設備機器の交換など。
「リノベーション」とは、比較的大規模な改修工事。例えば、間取りの変更や、表面的な交換ではなく下地からやりかえる、配管等をすべて取り替えるなど。ゼロからやり直すイメージの工事。
いかがでしょうか。「リフォーム」「リノベーション」の違い。簡単に言ってしまえば、程度が違うということになります。
リフォームとリノベーション どちらを選べばよいか
「リフォーム」と「リノベーション」という二つの選択肢。どちらを選んだらいいのだろう?
「おしゃれな住まいにしたいからリノベーションをしよう」。悪くはないですが損をする可能性もあります。実際、リフォームでもおしゃれな住まいは作れます。リノベーション=おしゃれ。ということではありません。リノベーションを選択することで、あまり必要のない工事まで行い、コストが上がるかもしれません。では、どういう場合が「リフォーム」で、どの場合は「リノベーション」が良いのか。
次の二つの観点からどちらを選択するのが妥当か、考えるとよいと思います。
1.住まいに手を入れる目的
あなたがなぜ、住まいに手を入れたいと思ったのか。その目的によって選択肢がかわります。
例えば、トイレをきれいにしたい。掃除をしやすくしたい。など、配置や部屋の広さに問題があるわけではなく、見た目や機能性を向上させたい。この場合は「リフォーム」で十分目的を果たすことができます。
一方、家事動線が悪いのでキッチンや洗面所の配置を変えたい。居住する人数や生活スタイルが変わるため、大幅に間取りを変更したい。などの場合、「リフォーム」で対応することは難しく、「リノベーション」をお勧めすることになるでしょう。
ここで注意しなければならないのは、「リフォーム」と「リノベーション」の境界線は業者によって認識が違います。リフォーム業者だからといって、リノベーション工事をしないわけではありません。業者を選ぶ際は、ホームページなどでどのような工事をしているか確認することが大切です。
2.住まいの築年数
自動車やスマホが進化し続けているのと同じように、住まいも進化し続けております。新築する際は、その時代の一番新しく、最善の資材や設備を使用し、その時代の建築基準法に適合するように建てられます。なので10年・20年と時が経てば、新しい資材が開発されたり、法改正などがあったり、知らぬ間に時代に合わない建物になってしまいます。
細かい事を言い出すときりがないですので、これだけはというポイントだけ紹介していきます。
「リノベーション」をお勧めする案件
・1981年以前の建物 … 旧耐震。耐震性が低い可能性がある。耐震補強も検討してほしい。
・2005年頃より前の建物 … 宅内の給水管や給湯管が鋼管。腐食し漏水する可能性がある。
この2つのポイントはかなり大きいです。耐震性が低いから必ず倒壊するわけではありませんが、せっかく手を入れるのであれば、耐震補強も検討してほしいです。耐震補強をするとなれば、床をめくったり、壁をめくったり…、必然的に大規模な修繕になってしまいます。宅内の配管に関していうと、現在はポリ(樹脂)管を使用することがほとんどです。錆も出ないし、地震に強い、劣化しにくい優れものです。この配管にすべて交換するためには、やはり床をめくったり…と大きな改修工事になることが多いです。
せっかく工事をするのであれば、見た目だけではなく中身のことも考えたほうがよいでしょう。今回は、比較的大規模な工事を「リノベーション」と定義しています。業者によっては、これぐらいの規模の工事でも「リフォーム」と表現しています。誤解しないようお願いします。
まとめ
「リフォーム」と「リノベーション」の違い。どちらを選ぶべきか。少しは参考になりましたでしょうか。どちらがよいか?というよりは、あなたの目的と建物の築年数を考慮した選択が必要です。言葉のイメージに惑わされないことも重要です。また、「リノベーション」は最近出てきた言葉ですので、「リフォーム」と「リノベーション」を区別せず、「住まいを直す=すべてリフォーム」という認識でいる業者も数多く存在しています。
今回は、コスト面に関してほぼほぼ触れておりません。安さだけで選ぶと大切なことを見逃してしまうことが多いからです。まずは、必要な工事が何なのか?を見極めることが重要だと思います。良い選択をして快適な住まい・生活を手に入れてくださいね。
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